ちょっと節穴 / A little bit blind

ドラマや映画、音楽について書いてます。時々本も。A blog about dramas, movies, and music. Sometimes books.

じゃあ小室哲哉はどうすればよかったの?

小室哲哉さんの一件になんかモヤモヤしています。
モヤモヤの原因は現在日本が抱える介護・看護の闇があるのを見たような気分になったからです。前からなんとなく知ってはいましたが(介護うつとかカサンドラ症候群とかね)、それをものすごく分かりやすい形で提示されたというか。全くもって他人事ではない話に恐怖を感じたというか。そんな感じです。

小室さんご本人が会見の最後に

最後にひと言だけ。
たった1人の言動で、日本社会が動くとは思っていませんが、高齢化社会や介護の大変さ、現代社会のストレスといったことに、少しずつこの10年で触れてくることができたかな、と。
こういうことを発信することで、みなさんが何かいい方向に進んでくれたらいいなと思いました。
微力ですが、何かが少し響けばいいなと思います。本日は、ありがとうございました。


と語ったそうですが、そうだよなぁ、と。

前も書きましたけど、バカだなぁと思いますよ。実際に恋愛関係にあったかどうかは分かりません。お互いの家に泊まっているのだから、「普通の友人以上の関係」ではあるでしょう。もしかしたらシャーロックとジョーンのような、「病人とその支援者」なのかもしれませんが。でも「大人の女性と会話がしたかった」なら自分の看護師を自宅に呼ぶのではなく銀座なり六本木なりに行けばよかったと思います。

ただ、妻だったはずの人が娘のようになってしまって、自分もC型肝炎なんて死ぬかもしれないような病気にかかったり、左耳が聞こえなくなったりして、精神的にも体力的にも弱っているときにそばで話を聞いてくれた人に惹かれてしまうのは仕方のないことだよなぁとも思うのです。少なくとも私ならそこに寄りかかりたくなると思います。実際に行動に移すかどうかは別にして。でもたぶん、お金の発生するコミュニケーションではなくて、もっと近いコミュニケーションに飢えていたんだろうなぁと思うのです。
もしも小室さんが自分が抱えている重圧をもっと分散できていれば持ちこたえたかもしれません。でもなかなかそんなにうまくは行かないのが現実です。

じゃあ小室さんはどうすればよかったんでしょうね。

A:何もしない。誰かを好きになっても我慢。ひたすら妻の介護と仕事に徹する。
B:妻とは離婚して、新しい生活を始める。慰謝料として妻の生活費くらいは出すかも? 恋愛も自由。
C:妻とは離婚せず、介護も続けるけど、恋人は外に作る。

まぁ、正直どれを選んでも形の違う苦しみが襲ってきますよね。

A……世間からはバッシングされることもなく、「献身的な旦那さんね」と思ってもらえる。でも自分にかかる重圧(自分よりはるかに長生きするであろう妻の生活をどうするか? 還暦を前に体力がなくなっていくのを感じる日々)にいつまで耐えられるかわからない。寿命ではなく介護うつで自分が先に死んでしまう可能性もアリ。「障がいのある家族の将来を悲観して」などの心中事件がたまに起こりますが、こういうパターンなんじゃないかな、と。
B……盛大に世間からバッシングされます。曰く、「逮捕された時も支えた妻を捨てるなんて酷い!」。でも生活費さえ払えばホントはこれが最善の策だったのかな、と思います。KEIKOさんのことはもう娘と割り切って、生活の面倒は見るしリハビリも手伝うけど夫婦としてはもう一緒にはいられないんだ、ごめんね、と。少なくとも当事者への負担はこれが一番少ない気がする。
C……これが今回のパターンで、バッシングを受けます(割と同情的な意見が多いですが)。良い手だとは思いませんが、Aよりはマシだと思います。

世間的にはAを美徳とする風潮がありますが、これはもう無理なんだと思います。介護とかって精神論でどうにかなることじゃないから。配偶者だけにこの役目をやらせるのは無理がある。できる人もいるのかも知れないけど、その人にだって本当はそんな負担をかけるべきではないと思うのです。
Bが一番いいとは思うけど、これは一つ大きな問題があって、十分な資金のある人しか満足いく形ではできません。

まぁこうなる前にどっかに助けを求めろよ! ちゃんとストレスを分散させとけよ! というのが模範解答なんでしょうけど。
日本では特に圧倒的に介護者や看護者へもケアが必要であるという認識が全くもって浸透していないように感じます。浸透していないからケアも十分ではない。というのが現状なのではないかなと思います。「上手くやって当たり前」。そんなことあるわけないのにね。
上にも書きましたが、できる人もいるのでしょう。でも、その人にだって本当はそんな負担をかけるべきではないと思うのです。

今後日本という国が直面するであろう超高齢化社会ではもっと大きくなるであろう問題、今からどうにかしないと本当に大変なことになると思います。

学級委員のように正論をかざす人が多い問題でもありますが、マジでそれじゃあ持たんよ。

ということを目の当たりにして、モヤモヤモヤモヤ。

小室さんの引退に関しては、ご本人が「生き恥をさらしてでも音楽を作れと世間が言うなら……」と言っていることからすると、もうそれすら辛いんじゃないかなぁと思います。仕事と介護をギリギリでやってたところに文春さんからの絨毯爆撃を受けてなにかが切れてしまってどうでも良くなっちゃったんじゃないかな……。と、邪推ですけど。そうだとすると結構心配。
戻ってきたくなったら戻ってきたらいいと思うし、引退したままがよければそれでもいいんじゃないかな。
小室さんの好きにするのが一番いいと思います。