ちょっと節穴 / A little bit blind

ドラマや映画、音楽について書いてます。時々本も。A blog about dramas, movies, and music. Sometimes books.

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』ネタバレ感想

各局がこの作品を紹介する際、壮大なネタバレをしていてマジでやめてくれよと思いました。人の読書を邪魔しちゃダメですよ。
この話は一応秘密がどんどん明かされながら進行していく作りになっていて、その「秘密がお話全体を覆う不穏な雰囲気を作り出しているので、そこのところを最初から明かしてしまっては読書の喜び半減ですよ。
読んでいればかなり早い段階で、っているか何なら1ページ目から「こういうことなんだろうなぁ」ということは分かるんですけどね。でも最初から「これが答えだぜ!」と明かされてるのは納得がいかないなぁ。

だって、お話の中ではその「秘密」は「どうだこれが答えだ!」という風には明かされないのです。ただただ淡々と、「最初からそういう前提でしたよ」という雰囲気で、その世界での当然のこととして語られます。そして我々からしてみれば「ショッキングな事実」が冷静に、我々の日常のことと同じように語られる様が、悲劇的な運命を葛藤を抱えながらも淡々と受け入れる、受け入れるしかない主人公たちの悲しみをそのまま表現しています。

盛大なネタバレをメディアがしているので隠すのもアホらしいんですが、なんというのかできる限りネタバレをせずに感想を書くのがとても難しい作品です。色々思うところはあるのですが……

カズオ・イシグロの作品の中でも特に読みやすいものになってますので、ここから入るのは悪くないと思います。