ちょっと節穴 / A little bit blind

ドラマや映画、音楽について書いてます。時々本も。A blog about dramas, movies, and music. Sometimes books.

カズオ・イシグロ、ノーベル賞受賞! / カズオ・イシグロの好きな本トップ5!

やった!

めっちゃ嬉しい!

大好きなんですよ大好きなんですよ大好きなんですよ!

ノーベル賞受賞するとは!

本屋で日本人作家の「い」の列に並んでいるのを見つける度にそっと海外作家の「イ」の列に移動させる程度には大好きなんですよ! 一番酷かったのは時代劇日本人作家の「い」のところで池波正太郎先生の隣に置いてあったときです! 『浮世の画家』の「浮世」から「浮世絵」を連想したものと思われます! こっそり置場所を変えてあげたら翌日全部売れてましたよ! 正しい陳列が売り上げには大事なのです!

こうなったらカズオ・イシグロの好きな本トップ5ですぞ!

1.わたしを離さないで
キーラ・ナイトレイキャリー・マリガン主演、マーク・ロマネク監督で映画化もされました。日本でも綾瀬はるかさん主演で去年くらいにドラマ化されましたね。
初めて読んだカズオ・イシグロの本が『わたしを離さないで』です。ジャンルは恐らくSFになるかと思います。
最初の一文から引き込まれます。主人公のドライでどこか悲しい感じに、さらりと挿入される聞き慣れない言葉。
これはカズオ・イシグロの作品に共通することですが、全てがあっさりと表現され、こっちの注目を引こうという雰囲気が全く感じられない文章が続きます。
それが特にこの作品にピッタリ来ます。
人間が生まれてきた意味とは。
ヘールシャムという場所を想像すると、緩やかで殺風景な丘陵地帯にポツンと建つ建物が浮かんでくるのですが、そんなところで子供たちを育てるのはせめてもの情けなんでしょうか。

2.日の名残り
カズオ・イシグロはこの本でイギリスで最も栄誉ある文学賞ブッカー賞を受賞しました。
私が初めてカズオ・イシグロという名前を知ったのは、高校2年生のころです。母のVHSを漁っていたときに録画された映画『日の名残り』を発見し、観た感想を母に伝えたところ、「この話を書いたのは日系イギリス人なんだよ」と教えてくれたのが最初です。
それから実際にこの本を読むまで10年かかりましたが、たぶん高校生で読むよりもずっとよかったと思います。
いわゆる「信頼できない語り手」によって語られる物語です。
自分の老いとどう向き合うか、というとても難しい内容を読みやすく、しかも一見そんなテーマではないかのように描いています。真剣で重苦しいようなこともなく、結構随所に笑いもちりばめてあります。
この本の執筆当時、カズオ・イシグロは今の私と同じか下手したら若いくらい。すごすきます。30そこそこって。

3.忘れられた巨人
一番最近の作品です。それまでは現代、少なくとも第二次世界大戦後の世界を描いていたカズオ・イシグロが、アーサー王の時代を描いた作品です。ドラゴンが出てきたりします。でも描いているのはあくまでも人間。
忘れてしまうこととそれによる許しを描いた、のかな。
誰かとの間に昔起こった「何か」を忘れてしまえたら。その後に素晴らしい関係を築けたら。思い出したあとにその関係を否定するだろうか。そういう話です。
もしも大事な人に裏切られたと思ったら思い出したい話です。


4.浮世の画家
第二次世界大戦後の日本が舞台の作品で、昔は高名だった画家の人生がたった一つの出来事のせいで大きく変わってしまった、そういうことを描いた話です。
それを考えると、『日の名残り』のダーリントン卿とも少し通じるところがあります。
ここで描かれる長崎は、5歳でイギリスへ移住したカズオ・イシグロの記憶の中の長崎だそうです。
だからどこか幻想的というか、強いて言うなら現代に書かれた大正時代を読んでいるような気分になります。

5.夜想曲集
短編集なので入門としては入りやすいのではないかと思います。
元々ミュージシャンを目指していたこともあり、音楽への造詣も深いカズオ・イシグロが描いた、音楽を巡る5つの物語です。
なので、他の作品とは違って本当に普通に現代の話です。こんな普通の話も書くんだ……と変な感動をしました。昔、別の短編を読んだ(河出書房から出てる世界文学全集の短編集2に収録されてます)のですが、それは普段のちょっと不思議なカズオ・イシグロでした。
この本に収録されているなかでは、個人的には『老歌手』と『モーバンヒルズ』が好きです。


ちなみに日本語は「子供が両親に話すような日本語」しか話せないので、外では話さないそうです。もちろんご両親やお姉さんとは日本語で会話していたそうです。