ちょっと節穴 / A little bit blind

ドラマや映画、音楽について書いてます。時々本も。A blog about dramas, movies, and music. Sometimes books.

ミヒャエル・ハネケ『隠された記憶』ネタバレ感想

非常に今さらですが、ミヒャエル・ハネケ監督の『隠された記憶』を観ました。ずーっと観たいなぁと思ってて、4、5年前に一回DVD借りたけど結局そのときは観なくて、やっとこさ鑑賞を終えました。

めーっちゃ考えさせられる映画でした。

以下、盛大にネタバレしてます。未見でこれから観る予定のある方は戻るボタンをクリックプリーズ!













































































































主人公はテレビ司会者として成功しているダニエル・オートゥイユ(役名忘れた)。妻と思春期の息子と3人で、パリで結構いい生活をしています。そんなオートゥイユさんちにある日、自分達の日常をただひたすら撮影した、差出人不明のビデオテープが届いたところからお話が始まります。
こんなミステリアスなつかみな上に、宣伝の仕方が「驚愕のラストカット!」だったもんですから本格ミステリーなんだとばかり思って観てました。


ら、全然違う話でした!


結論から最初に言っちゃいますと、最後までテープの送り主は明かされません。
でもね、観てるとだんだん「あぁ、これって謎解き映画じゃないのね」ってことが分かってくるので、そこが明示されなくても特に不満は感じませんでした。


当のハネケじいちゃんも「ま、送り主云々は観た人が自分で考えてよ!」ってスタンスらしく、観た人間の分だけテープの送り主がいるんじゃないですかね。

で、ずっと考えてたのですが、私なりの答えは「この映画は、主人公の精神世界を描いたものである。だから、テープの送り主は主人公の潜在意識」です。

ダニエル・オートゥイユは、6才の時にやった「あること」に対して、ずっと罪の意識を持っているのですが、それがあんまりにもあんまりなことなので、自らその記憶を封印して、「なかったこと」にしていました。
が、当然やった事実は変わらないし、その記憶がなくなるわけではないので中年になっても心の中のどこかでなんとなくやましさを感じていた。
そしてそんな自分に、潜在意識が投げ掛けてきた警告があのビデオテープなんじゃないかと。
これ以上辛くなる前に、あのことを思い出して、自分のやらかしたことをきちんと受け入れろ!
っていう、自分からのメッセージ。

で、ダニエル・オートゥイユは葛藤しまくります。葛藤するんだけど、結局自分がひどいことをした事実を認めるのは辛すぎて、相手が悪かったことにして自分を正当化する道を選びました。
んで、まぁその結果「やらかしたこと」からずっと逃げてたのに、結局その「もう取り返しがつかない」という最悪の重荷を背負うことになるわけですが……。


「驚愕のラストカット!」は、何を「驚愕」としてるのかはまぁ分かるんですけど、その意味してるところが最初観たときは私はイマイチ理解できませんでした。

でももしこれが主人公の精神世界の話だとすると、あのラストカットは「あんな状況でも残ってる希望」なのかな……と思います。
まだ自分の道を正すチャンスはあるんだよ。と。