ちょっと節穴 / A little bit blind

ドラマや映画、音楽について書いてます。時々本も。A blog about dramas, movies, and music. Sometimes books.

BBCシャーロック2 "REICHENBACH FALLS" ネタバレ感想

まずは今更もいいとこですがBAFTAの結果から。
ベネディクト・カンバーバッチはまたまた主演男優賞獲れませんでしたね。残念だけど、同じ年に何個も大きな賞を受賞するとそれだけ俳優としての命が短くなってしまうような気もするので、今年はオリヴィエ賞だけでよかったんじゃないかな、と思います。来年は獲ってほしいですけどね!
そしておめでとうのモリちゃん先生ことアンドリュー・スコット。セカンドシリーズを観て「あ~これは今回アンドリューいくかもな~」と思っていて、良かったとは思うんですが、やっぱり私の心はスティーヴン・レイを応援していたらしく、かなりがっかりしました。や、アンドリューも良かったんだけどさ、タイミングが悪いっつうの? なんでスティーヴンと同じ年にノミネートされちゃうのよってねぇ? しかもアンドリューがスピーチしてるときに一瞬スティーヴン・レイが映るんですが、これがまたかなり落胆しているように見えて……。若手に賞をあげるのは大事だと思いますけどね。でも残念!
とはいえ、バックステージでインタビューを受けるアンドリュー・スコットはかなりいい感じでした。まさか自分がもらうとは思っていなかったと本人が言っていますが、あれは多分、本当に自分が受賞するとは思っていなかったのでしょう。あれが演技だったとしたら、やっぱり彼がもらうべきだろうというくらいの喜びようで、見てるこっちまで嬉しくなりました。
 
 
さて、以下はBBCシャーロック、シリーズ2の第三話、ライヘンバッハのネタバレありの感想です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
モリちゃん先生が『泥棒かささぎ序曲』をバックにバレエのような動きでロンドン塔の何かの展示ケースをぶち破ることから事件が始まります。この時のモリちゃん先生の動きが非常に美しかったです。アンドリューはバレエを習ってたことがあるのかな? とにかく手の動きがきれいで、このシリーズの中で最もお気に入りのシーンの一つです。モリちゃん先生は特殊ガラスを割るのにダイヤモンドを使っていましたが、炭素の結晶ってそんなに硬いんですね。
 
もろもろの出来事があって、シャロはモリの策略にはまり、にっちもさっちもいかない状況まで追い込まれます。
モリちゃんはシャロの周りの人間の心に、シャロに対する疑惑を植え付けて彼を孤立させようとします。「周りの人間」の一番大事な部分はもちろんジョンなんでしょう。
ジョンに詐欺師かもしれないと疑われているかもしれないことが怖くて仕方ないらしく、「感情とは離婚した」はずのシャーロックが机を叩き、さらに声を荒げてジョンに詰め寄ったりもします。ジョンがいくら「君を信じてる」って言っても「100%か?」とか聞いちゃったりして、よっぽど不安だったんだね。100%、って趣旨のことをジョンが言った時のシャーロックのホッとした顔ったら! レストラード警部も立場上シャーロックを逮捕せずにはいられなかったけど、ジョンに事前に連絡をくれたりして、結局のところシャロのことを信じてくれている(あるいは信じようとしてくれている)んですね。
 
それにしてもモリちゃん先生の作戦は巧妙かつ悪質で、大衆紙の記者を上手く取り込んで、シャーロックに関する偽の暴露記事を書かせます。厄介なのが、記者本人はそれが「偽の暴露記事」であることを知らず、更にその「偽」の部分はたった一点だけで、後は全部本当のこと、という点です。それも「極めて近しい人間しか知らないようなこと」で満載。
 
そしてシャーロックは「やることがある」とどこかに行ってしまいます。取り残されたジョンはマイクロフト兄のいるクラブへ乗り込んでいき、あんたがモリアーティにシャーロックの情報を与えたんじゃないかとお兄に詰め寄ります。で、モリちゃんから情報を得るためにシャロのことを話したとお兄は認めるのですが、ここがなんか不自然に思えるというか、それじゃあ兄貴マヌケ過ぎじゃね? って思うんですよね。ベルグレイヴィアでもそうでしたけど、お兄の判断ミスが多すぎるというか、そんなんじゃあとても「英国政府そのもの」な人間にはなれないと思うのです。怒りながら去っていくジョンにマイクロフトは "I'm sory." と言うのですが、この言葉は「喋ってもたゴメーン」じゃなくて、何かもっと他に意味のある "Sorry" だといいなと思います。どこからお兄とシャロのモリちゃん先生ぶっ潰し作戦の網が張られていたのかは、次のシリーズで明かされると思ってていいんですよね?
それにしてもあのシーンのマーティン・フリーマンはめっちゃカッコよかった。いつも飄々としているマイクロフトもなんだかタジタジ。自分のためにあんな風に怒ってくれる友達がいるなんて、そりゃあモリちゃんは嫉妬したでしょう。先生はきっと孤独ですからね……。だからジョンのシャーロックへの信頼を揺らがせたかったんでしょうね。まぁジョンは『ピンク色の~』でシャロが言っているように「鋼の心を持つ男」なので、一瞬たりともシャロのことを疑ったりはしませんでしたが。
 
そして今回一番の変化を見せたのはやはりシャーロックとモリーちゃんの関係でしょう。
普段モリーちゃんに対してのシャーロックは小学生のいじめっこみたいな感じなので(ホラやっぱ、8歳って設定だから)、元々モリーちゃんのことは嫌いじゃないんでしょう。多分嫌いな相手ならもっと酷い扱いを受けてるだろうし(アンダーソンがいい例ですね)、シリーズ1でモリーちゃんにした恋愛指南(?)はどうやら本気で親切のつもりでやっていたことがシャロの口調と表情から分かります。でもやっぱりちょっと馬鹿にしてるというか、侮っている部分はあったわけです。
でもそんな女の子に結構グサッとくることをラボで指摘され、ドキンとなっちゃっていつものように意地悪く対処できないシャーロックがよかったです。食べ物を買いに出ていくモリーちゃんにシャーロックが弁解するみたいな感じで何かを言おうとするのですが、モリーちゃんがそれを遮って行ってしまうので、結局シャロが何を言おうとしたのかは分からずじまいなんですよね。あのあとなんて言おうとしてたのかな。
そして物語の終盤、二人の関係はもっとしっかりとした繋がりになります。
どうやらシャーロックがモリーちゃんに自分の命を預けたらしいことから考えても、「君はいつだって数に入っているし、僕は君をずっと信頼してきた」ってセリフは言うことを聞かせるための嘘ではないと思うのです。
やっぱさぁ、モリーちゃん、シャーロック落とせるって! 恋愛関係になるかどうかは分からんけど、すくなくともアイリーンよりももっと現実的で、もう一段上の「あの女(モリーちゃんの場合『あの娘』って感じ?)」になれると思います。ってゆうかすでにそうなのか? 遺志を残す相手にもちゃんと含まれてたしねん。