前回『ある男』の感想で、『忘れられた巨人』の感想を引用しました。
今回読み返してみて、そういえばこの時に書いたことのアンサーになるような経験をしたんだったなぁと思いだしたので書いてみます。
子供を妊娠していたとき、許せないことを夫がしました。ちなみに夫の名誉のために言っておくと、浮気・借金・暴力の類ではありません。人によっては「え? そんなこと?」と思うようなことです。でも私はとにかくそれが許せませんでした。「信頼」という大きな樹が切られたように感じていました。
そうこうしているうちに子供が生まれ、私は実家に1ヶ月ほどお世話になりました。
そして夫はその間毎日、仕事が終わると実家に顔を出して、できる限り赤ちゃんのお世話をしてくれました。
家も実家も夫の職場に近かった(家=自転車で15分、実家=自転車で5分)のでめちゃくちゃ無理をしたわけではないと思いますが、それでも家と実家とは職場を挟んで反対方向だったし、毎日残業してそのあと来てくれていたので大変だったと思います。
それでも夫はちょっとでも赤ちゃんや私と関わろうと本当に毎日来てくれたのです。
で、その姿を見て「あ、違うんだな」と思いました。
「信頼」って大きな樹が一本だけあるようなものじゃなくて、森みたいなもんなんだな、と。
夫は間違いなく森の木を一本切っちゃったんだけど、でも切ったと同時に新しい木もどんどん植えてるから、森が消えることはないんだなとその時感じました(森に火を放って焼き払う場合もあるけどね。それこそ浮気・借金・暴力とか)。
だから、関係を維持したければたとえ小さい苗でも植えていくことが大事なんだろうなと思います。そしてそういう思いやりを続けることで木もどんどん成長していく。そうやって森を広げていけば、木が切られて一部が死んでも何とか乗り越えられるんじゃないかな。
そう思えてから、私は夫に「許せなかったときの気持ち」をすんなりと話すことができました。「許せなかった」とは伝えてないんですけど(笑)。でも責めるよりももっとずっといい形で気持ちを伝えることができました。夫も落ち着いて受け止めてくれたので、また一本木が植えられたなと思います。
あ! ちなみに切られた木は元には戻りません! 切られたまんまです! だから今でもその部分に関してはイマイチ夫を信用してないよ! ほかの部分で補えてるってことです。